実施報告

2022.11.30
アートラボぎふ

篆刻実技講座 古(いにしえ)の文字を印に刻む2 実施報告

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岐阜県書作家協会常任理事の波多野公一氏を講師にお迎えし、篆刻を制作する体験講座を開催しました!

 


【開催概要】

◆日時  令和4年11月5日(土) 10:00~16:30

◆会場  岐阜県博物館(関市)

◆講師  波多野公一氏(岐阜県書作家協会常任理事)

◆参加者数  10名


◆内容  昨年に引き続き、篆刻を制作する講座を「岐阜県博物館」において開催。当日は「発見!いにしえの岐阜-弥生・古墳・古代-」という特別展が開催中で、講座開始前には学芸員さんの案内で史跡から発掘された貴重な品々を見て回りました。その中の一つ「美濃観音寺山古墳(美濃市)出土 方格規矩四神鏡」(岐阜県重要文化財)には本日の講座で習う篆書と隷書の混合体である漢金文が銘文として刻まれています。

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会場には波多野先生の篆刻作品や呉昌碩(1844-1927)、西川寧(1902-1989)、小林斗盦(1916-2007)など著名な近現代作家の印影も展示されました。

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午前は座学を中心に、最初に、篆刻の名品と言われる趙之謙(1829-1884)の『二金蝶堂』などの作品がスライドで紹介され、篆刻の見方を学びました。文字の部分を彫るものを白文(はくぶん)、逆に文字を残して周りを彫るものを朱文(しゅぶん)という。側面に彫る「側款」は作品の由来などが記されているとのこと。また、字形に大きな違いはなくとも余白や縁の欠けにより印象が異なってくるとの説明がありました。

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その後、先程鑑賞した特別展に展示してあった「美濃観音寺山古墳出土 方格規矩四神鏡」の銘文とそれとほぼ同時代のもので現在中国に残っている鏡の拓本が紹介され、中央の方形には十二支の文字が入れてあるとの説明がありました。

次に、呉昌碩の石鼓文を取り入れた作品や二世中村蘭台(1892-1969)の木に彫った木印、中国漢代の鏡に見る文字とそれを応用した趙之謙の作品、小林斗盦の甲骨文を彫った作品などが紹介されました。また、「篆刻三法」といって、篆書の歴史を知り習熟して正しい文字を選び組み合わせる「字法」、文字を印面にどう配置するかという構成の「章法」、生きた線が出るよう運刀する「刀法」の三つがいずれも重要であるとのこと。次に、総称して“篆書”と呼ぶ甲骨文、金文、小篆などの解説がありました。

続いて、講師の筆の運び方をスクリーンに投影して篆書の書き方を学び、各自半紙に「皇帝」「金石」の篆書の文字を書く練習をしました。その後、先程説明のあった中国の鏡に入っている「受大福」という文字を色紙に書き、午後から制作する篆刻を落款として押印しようとするものです。

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昼食休憩をはさんで、午後からはいよいよ篆刻作りの実技が始まります。篆刻の印面構成、線の方向や太さの変化・欠けの効果をスライドで学んだ後、まず、講師が印材に刻すところを手元カメラでスクリーンに映し、印刀を手前に引いて刻す「引き刀」、手前から向こうに押す「突き刀」などの実演を見て「運刀」の基本を学びました。その後、線を刻す練習から始めます。

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続いて、来年の干支である癸卯(みずのとう・きぼう)の文字を刻す講師の実演を見た後、参加者の皆さんも挑戦です。まず最初に「印材の準備」です。平らなガラス板の上に400番の紙やすりを敷いてその上で印材を回しながら擦りつけ表面の蝋を削り落とします。講師が準備いただいた4点の作例の中から好みのものを選んで、濃い目に磨った墨で雁皮紙に書写します。墨が乾くのを待ち、その上から先ほど書写した紙を裏返して印材に貼りつけます。ここで注意しなければならないのは、垂直水平に文字がずれないようにすることが肝要とのことです。その上から指先に水を少しだけ付けて色がうっすらと変わる程度に濡らし、その上に八つ折にした紙を置いて上から擦ると反転した文字が転写されて「布字」が完了です。

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次に「運刀」です。印材に転写した文字を印刀で刻していきます。「引き刀」や「突き刀」など各自思い思いの印刀さばきで文字を刻していきます。最後に、講師に修正箇所を教えてもらい、補刀して完成です。

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この一連の作業を実践した後、参加者自身の雅号を刻す作業に移ります。参加者の皆さんが印に刻む文字はあらかじめ聞いており、講師が準備いただいた甲骨、金文、小篆などの書体を選んで始めます。時間切れで全員の方が完成まで至りませんでしたが、早い方は雅号の印も出来上がり、午前中に描いた「受大福」の色紙に落款を押して作品が完成しました。

本講座の参加者は「篆刻」体験が初めてという方が多く、講座で使用した「篆刻」道具一式を格安で販売したところ、既にお持ちの方以外は皆さん購入して帰られました。今回の講座がきっかけとなり、「篆刻」を身近に感じて経験を積まれることを期待するものです。

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◆参加者の声  「丁寧に欠けやつぶしのことを教えていただき大変良かった」「内容が充実している。興味のある内容。講師の方が素晴らしい」「博物館展示の銅鏡について、大変興味深いお話が聞けて良かった」と、講師の丁寧な指導により、初心者でも楽しく篆刻作りを体験した満足度の高い講座となりました。

 

 

  

 

 

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