書道家でありアーティストの横山豊蘭氏をお迎えして、『方丈記』の一節を臨書し、それをプリントしたTシャツを着て街に出ようというワークショップを開催しました!
【開催概要】
◆日時 令和4年9月25日(日) 10:00~17:00
※9月24日(土)10:00~16:00 講師の作品展示一般公開
◆会場 後楽荘(岐阜市)
◆講師 横山豊蘭氏(書道家・アーティスト・名古屋芸術大学非常勤講師)
◆参加者数 12名
◆内容 これまで2回、大書実技講座の講師を務めていただいた横山豊蘭先生を講師にお迎えし、今回は、鴨長明の『方丈記』の一節を臨書して、それを参加者自身の手でTシャツにプリントし、そのTシャツを着て街に出るというワークショップを開催しました。会場は、岐阜市のシンボル、金華山の麓にある「後楽荘」。明治時代後期から続く伝統的で風情のある建物と、四季折々に表情を変える広大な日本庭園のある老舗料亭。全客室が庭園に面しており、窓からは岐阜城を望むことができます。新型コロナウイルスの影響で休業に追い込まれましたが、当アートラボぎふのダイレクターである古田菜穂子氏の提案により、本プログラムの会場としてお借りすることができました。これを機に、芸術などの貸し会場として新たな一歩を踏み出すとのことです。
25日(日)のワークショップに先立ち、24日(土)にはこの風情のある客間や茶室など建物全体を使って横山先生の作品を展示し、一般公開(無料)しました。玄関を入って右側のショウウィンドウ内の全長5mを超える『方丈記』全臨をはじめ、茶室の床の間に掛けられた『方丈記』の最後の一節に登場する「不請阿弥陀仏」の掛け軸や「GUNDAM~来たるべき未来のために~展」の展示作品などなど20点余の作品が館内いたるところに展示され、女将さんが活けられた花と相まって会場全体をアート作品として多くの皆様に鑑賞していただきました。
25日(日)は事前申込制によるワークショップを古い蔵を和モダンの客間に改装した「燈くら(ともくら)」で開催しました。最初に講師による『方丈記』の説明がありました。今から約800年前、鎌倉時代前期に鴨長明自筆によるものと伝えられている現存する最古の写本『大福光寺本』は漢字と仮名の混じった「和漢混淆文」で記述された文芸作品であり、最初の有名な一節「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。」は美しくて無常観を超えて親しまれているとの話がありました。講師自身、鴨長明に近づきたいという想いから全臨しようと思い立ち、全長5m超の臨書を完成させ、「後楽荘」の玄関に展示されました。
また、講師が教鞭をとる名古屋芸術大学の声優アクティングコースの学生や静岡県立清流館高校書道部の生徒、そして講師が主宰する書道美術研究所絵画教室の子どもたちの協力を得て録音された『方丈記』の朗読が紹介されました。この朗読は、本講座の記録映像と共に「アートラボぎふONLINEホームページ」において後日公開する予定です。
その後には、あまり知られていないが鴨長明は実は芸術家だったことや、『方丈記』を通してうかがい知る鴨長明の苦悩や葛藤についての解説がありました。
次に、『方丈記』の一節を臨書します。臨書に先立ち、講師が筆の持ち方、筆の運び方など基本的なことから、鴨長明の書く文字は筆をやや前に倒すと書きやすいなどの高度なテクニックまでスライドに投影しながらレクチャーがありました。その後はいよいよ臨書です。4種類の一節の中から各自好きなものを選びます。中でも「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。」という冒頭の一節が人気で、多くの参加者が臨書に取り組みました。
昼食休憩をはさんで午後からは臨書した文字をTシャツにプリントします。2班に分かれて、1班がプリントしている間、別の班は女将の案内で講師の作品が展示された会場を案内いただきました。
Tシャツへのプリントはシルクスクリーン印刷の手法を使います。まず臨書した一節をコピーし、それを原稿として版を作ります。「Tシャツくん」という機器を使えば一瞬の露光で版ができますが、今回は自然光を使って露光します。スクリーンには特殊な塗料が塗ってあり、光が当たるとその部分だけ固まり、文字の部分は黒く光を通さないため塗料が固まらず、水を付けながら刷毛で擦ると塗料が落ちて文字が浮き出てきます。しかし、露光の時間の調整が難しく、長すぎると文字の部分まで光が透過して塗料が固まってしまい文字が浮き出ず、逆に短すぎても文字の周りが固まらず刷毛で擦ると塗料が落ちてしまい文字の形が崩れてしまいます。1分程度直射日光に当てたり、陽が翳ると露光時間を長くするなど苦労の末、版を作成しました。
次はTシャツにプリントです。プリントしたい位置を決めて版を置き、版の端にインクを落とし、スクイーズで均一に伸ばして文字の上にしっかりとインクを塗り付けます。そして版を外してドライヤーで乾かせば完成です。『方丈記』の一節を臨書した世界に1枚だけのオリジナルTシャツが出来上がりました。
本来は、この後、自身が臨書した文字を纏って岐阜公園まで行く予定でしたが、露光作業が難しく思いのほか時間を要したことから、代わりに「後楽荘」の玄関先で講師と一緒に記念写真を撮って講座を閉じました。
◆参加者の声 「方丈記について知ることができ、後楽荘の内部も見せていただき感動です」「普段できない経験ができた。書に向かう時間も素敵でした。後楽荘さんも空間が良かった」「ステキな場所での開催で、とても贅沢な時間を過ごすことができました」など非常に満足度の高い講座となりました。