「第2回ぎふ美術展」書部門でぎふ美術展賞を受賞した波多野公一氏を講師にお迎えし、篆刻を制作する体験講座を開催しました!
【開催概要】
◆日時 令和3年11月28日(日) 11:00~16:30
◆会場 奥の細道むすびの地記念館(大垣市)
◆講師 波多野公一氏(岐阜県書作家協会)
◆参加者数 10名
◆内容 書のプログラムでは初めてとなる篆刻を制作する講座を「奥の細道むすびの地記念館」において開催。近くには、松尾芭蕉が「蛤のふたみにわかれ行く秋ぞ」と詠んで、水門川の船町港から桑名へ舟で下り、奥の細道の旅を終えた場所があります。
午前は座学を中心に、最初に、篆刻の名品と言われる趙之謙(1829-1884)の『二金蝶堂』がスライドで紹介され、篆刻の見方を学びました。文字の部分を彫るものを白文(はくぶん)、逆に文字を残して周りを彫るものを朱文(しゅぶん)という。側面に彫る「側款」は作品の由来などが記されているとのこと。その他、呉昌碩(1844-1927)や二世中村蘭台(1892-1969)の秦代・漢代の文字を彫った作品、小林斗盦(1916-2007)の甲骨文を彫った作品が紹介されました。また、「篆刻三法」といって、篆書の歴史を知り習熟して正しい文字を選び組み合わせる「字法」、文字を印面にどう配置するかという構成の「章法」、生きた線が出るよう運刀する「刀法」の三つがいずれも重要である。彫ることが大事だと思われるが、それは最後の1割から2割の部分であって、その前に、書道同様どのような構成にするかが8割ほどの重要性を占め、奥深いものだとのお話がありました。次に、総称して“篆書”と呼ぶ甲骨文、金文、小篆などの解説がありました。
続いて、講師の筆の運び方をスクリーンに投影して篆書の書き方を学び、各自半紙に「金石刻因」の篆書の文字を書く練習をしました。
昼食休憩をはさんで、午後からはいよいよ篆刻作りの実技が始まります。まず篆刻の道具の説明があり、次に、刻す語句を決める「撰文」に始まり、字を調べる「校字」、「印稿を作る」、サンドペーパーで印材を垂直・水平に整える「印材の準備」、印材に朱墨を塗り、鏡を用い印稿と反転した像を印材に筆で書く、又は雁皮紙等薄い紙を用い転写する「布字」、「運刀」、「押印」、「側款」の篆刻の8工程の説明がありました。「印材の準備」までは講師で準備いただけたので、参加者は「布字」からの挑戦です。
まず、講師が印材に刻すところを手元カメラでスクリーンに映し、印刀を手前に引いて刻す「引き刀」、手前から向こうに押す「突き刀」などの実演を見て「運刀」の基本を学びました。続いて、来年の干支である壬寅(ジンイン・みずのえとら)の文字を刻す講師の実演を見て、力強い線を刻す技を学びました。
参加者の皆さんが印に刻む文字はあらかじめ聞いており、講師が準備いただいた甲骨、金文、小篆などの書体を選んで、濃い目に磨った墨で雁皮紙に書写します。墨が乾くまでの間に、印材に朱墨を塗り、その上からさきほど書写した紙を裏返して印材に貼りつけます。ここで注意しなければならないのは、垂直水平に文字がずれないようにすることが肝要とのことです。その上から指先に水を少しだけ付けて色がうっすらと変わる程度に濡らし、その上に八つ折にした紙を置いて上から擦ると反転した文字が転写されて「布字」が完了です。
次に「運刀」です。印材に転写した文字を印刀で刻していきます。「引き刀」や「突き刀」など各自思い思いの印刀さばきで文字を刻していきます。最後に、講師に修正箇所を教えてもらい、補刀して完成です。
本講座の参加者は「篆刻」体験が初めてという方が多く、講座で使用した「篆刻」道具一式を格安で販売したところ、既にお持ちの方以外は皆さん購入して帰られました。今回の講座がきっかけとなり、「篆刻」を身近に感じて経験を積まれることを期待するものです。
◆参加者の声 「デザイン性を読み解く術を知りました」「初めての体験でしたが、先生の説明もあり大変良く分かりました」「とても充実した体験だった。作品を作りきることができて良かった」「素晴らしいレッスンでした。感謝です」と、講師の丁寧な指導により、初心者でも楽しく篆刻作りを体験した満足度の高い講座となりました。