「ぎふ美術展」の今回の展示作品は、入賞(ぎふ美術展賞・優秀賞・奨励賞)・入選合わせて371点。
その一つ一つがいっそう輝くために、審査員の先生方、そして岐阜県美術館の学芸員さんたちが舞台裏で活躍してくださっています。
審査会が始まるまでの間、皆さんからの約1千点に上る応募作品は、部門別にエリアを決めて、大型の作品はシートの上に載せたり、形状によっては横たえて広げたり、絵画のような平面作品なら緩衝材などを挟みながら壁に立てかけたりしながら、審査の日を待ちます。
そして審査会で「入選」と決まったら、審査員がお昼休みを取っておられる僅かな時間を使って、専任のスタッフが作品群を展示予定場所におおよそ並べて、展示スペースの目安や他のエリアとのバランスを目に見える形にします。午後、それらの中からぎふ美術展賞などが決まると、いよいよ本格的な並べ替え。審査員がイメージする順番、位置、向き、高さなどを聞き取ってスタッフが次々と仮置きし、不足する展示台などは追加発注や補修を指示していきます。
審査員の先生、そしてその全幅の信頼を受けた経験豊かな学芸員の方の指導を受けて展示の仕方が最終的に決まり、作品の移動を完了しても、まだ下作業は終わりません。仕上げは「照明」。特に絵画のような平面作品に陰影を伴う立体感を与えたり、制作者が意図したであろう“最も主張したいこと”を汲み取ってそこに焦点を当てる…その研ぎ澄まされた感覚は、余人を以ては代え難い職人技です。審査前には、ただ羅列してあっただけの作品たちがどんどん洗練され、生命を与えられて、来場者の心に感銘や驚きをもたらしてくれる…。美術展の開幕までに、人知れぬそんなドラマがあります。
展示エリアごとにも、審査員の先生方の感性や個性的な見方がはっきりと表れます。
例えば日本画部門。入賞作品7点を、展覧会場へ入って突き当たった右手の壁一面にずらりと並べました。本来、全く別々の技法、モチーフ、大きさを持った作品群を敢えて一面に並べる。そこに平穏な日常風景はなく、強烈な個性がぶつかり合って化学反応を起こしている静かな戦場が垣間見えます。
そうかと思えば日本画と洋画の境目には、金魚たちが穏やかに共生するモノクロの描写的な日本画の真横に、毒気を含んだキャラクターや2頭身大?の強烈な祭り人の洋画を配する見事な対照性。出口付近のショーケースには、様々な筆致で描き出された、オオサンショウウオをはじめとする多彩な動物画がずらり。229点のご応募があった洋画部門の多様性と、制作者たちの真摯な表現力を可能な限り反映させたい、と悩まれた審査員の想いが表れています。
一方、多目的ホールでは、元々ある「モーゼ」や「ピエタ」、「ロレンツォと夕と曙」の巨大な模像を借景として配置された、彫刻の力作の数々が生き生きと息づいています。眺める角度によっては、期せずして古典作品とモダンアートとが絶妙に融合しているコラボレーションをお楽しみください。